北欧家具の巨匠ハンス・J・ウェグナーが、その生涯で最後にデザインしたダイニングチェアをご存知でしょうか?
それが、「ラストダイニングチェア」の愛称で親しまれるPP58とPP68です。
ウェグナーが73歳の時に、「これまでの経験のすべてを注ぎ込み、コストと座り心地のバランスが取れた最高の椅子を作る」という信念のもとに完成させたこの2脚。一見すると同じデザインに見えるため、「どちらを選べばいいのかわからない」と迷われる方が後を絶ちません。
結論から申し上げますと、この2つの決定的な違いは「座面の素材」と、それに伴う「メンテナンス性」にあります。
この記事では、PP58とPP68の違いを徹底的に比較し、あなたのライフスタイルに最適な一脚を選ぶための判断基準を解説します。
安い買い物ではないからこそ、後悔のない選択をするためのヒントを詰め込みました。ぜひ最後までお読みください。
PP58とPP68の基本情報

まずは、この2つの椅子の基本的な生い立ちと、共通するデザインの魅力について解説します。なぜこれほどまでに世界中で愛され続けているのか、その理由を紐解いていきましょう。
PP58とPP68とは?デザインの魅力
PP58とPP68は、どちらも1987年にハンス・J・ウェグナーによってデザインされ、デンマークの工房「PPモブラー」によって製造されています。
最大の魅力は、「実用性を極めた機能美」にあります。
ウェグナーの代表作である「Yチェア(CH24)」はあまりにも有名ですが、実はYチェアには「アーム(肘掛け)がテーブルの天板に当たってしまい、奥まで収納できない」という弱点がありました。また、座面高や背もたれの角度など、長年の使用で見えてきた課題をすべて解決するために設計されたのが、このPP58とPP68なのです。
具体的には、浅めに設計されたアームが特徴的です。この短いアームのおかげで、テーブルの下にすっきりと収めることができ、日本の比較的コンパクトなダイニングスペースでも動線を邪魔しません。それでいて、肘を置くには十分な長さが確保されており、食事の合間にリラックスする機能を損なっていないのです。
「ただ座るだけでなく、生活の道具として優秀であること」。これが、PP58とPP68がラストダイニングチェアと呼ばれる所以であり、色褪せない魅力の根源です。
PP58とPP68の主な特徴と仕様の違い

基本デザインを共有する兄弟モデルですが、仕様には明確な違いが存在します。
決定的な違いは、座面の素材です。
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PP58:座面がレザー(本革)またはファブリック張り
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PP68:座面がペーパーコード張り
この座面の違いは、単なる見た目の違いだけではありません。実は、座面を支えるためのフレーム構造自体が異なります。
PP68(ペーパーコード)は、コードを巻きつけるための「L字型の釘」や枠組みが必要となる一方、PP58(レザー)は座面の下に板をはめ込む構造になっています。そのため、厳密には椅子の骨格レベルで作り分けられているのです。
また、サイズ感についても触れておきましょう。
基本サイズは幅58cm、奥行き48cm前後でほぼ同じですが、PP58の方が座面にクッション材が入る分、また構造上の違いから、座り心地の深さや沈み込みに微妙な差が生まれます。
【仕様比較まとめ】
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項目 |
PP58 |
PP68 |
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座面素材 |
レザー / ファブリック |
ペーパーコード(ナチュラル/ブラック) |
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印象 |
重厚・モダン・ラグジュアリー |
ナチュラル・軽やか・北欧伝統的 |
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メンテナンス |
拭き掃除が可能(革による) |
張り替え・汚れへの注意が必要 |
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価格帯 |
比較的高価(革のランクによる) |
PP58に比べると抑えめ |
このように、素材の違いが「使い勝手」と「空間の印象」を大きく左右します。では、具体的にどちらを選ぶべきなのでしょうか。次章で深掘りしていきます。
PP58とPP68はどちらを選ぶべき?
「結局、我が家にはどっちが合うの?」
その疑問に答えるために、選択の決め手となる3つのポイントを整理しました。これから、「メンテナンス性」「座り心地の変化」「インテリアの相性」という3つの視点から、それぞれの選び方を具体的に解説していきます。
1. メンテナンス性で選ぶ:小さなお子様がいるならPP58
最初の判断基準は、「汚れを許容できるか、拭き取りたいか」という生活スタイルの違いです。
結論として、小さなお子様がいるご家庭や、汚れを気にせずガシガシ使いたい方には「PP58(レザー座面)」を強くおすすめします。
その根拠は、水拭きやメンテナンスの容易さにあります。
ダイニングチェアは食事をする場所ですから、食べこぼしや飲み物のハネは避けられません。PP58のレザー座面(特にコーティングされたセミアニリンレザーなど)であれば、スープをこぼしてもサッと水拭きで対処できます。また、レザーは耐久性が非常に高く、適切なケアをすれば数十年単位で張り替えなしで使い続けることが可能です。
一方、PP68のペーパーコードは「紙」を撚り合わせた素材です。撥水スプレーなどで対策はできますが、一度染み込んだ液体(コーヒーや醤油など)を完全に拭き取ることは困難です。シミも「経年変化(味)」として楽しめる方なら問題ありませんが、清潔感を最優先したい方にとってはストレスになる可能性があります。
「子供が小さいけれど、どうしてもウェグナーの椅子が欲しい」。そんな方にとって、拭き掃除ができるPP58は、デザインと実用性を両立した最強の救世主となるでしょう。
2. 座り心地の好みで選ぶ:自分だけの椅子に育てるPP68
2つ目の基準は、「座り心地の経年変化を楽しみたいか」です。
結論として、長時間座ることが多く、自分のお尻の形にフィットする感覚を味わいたいなら「PP68(ペーパーコード)」がおすすめです。
その根拠は、ペーパーコード特有の「馴染む」性質にあります。
購入当初、PP68のペーパーコードはピンと張られており、意外と硬く感じるかもしれません。しかし、半年、1年と使い込むうちに、繊維が適度に緩み、座る人の体型に合わせて沈み込んでいきます。この「自分だけの形に育っていく感覚」こそが、ペーパーコードの醍醐味です。また、通気性が抜群に良いため、夏場でも蒸れることなく、長時間座っていても不快感がありません。
対して、PP58(レザー)にはウレタンなどのクッション材が入っているため、座った瞬間から「柔らかい」と感じます。しかし、クッション材は長年の使用で「ヘタリ」が生じることがあります。
「最初の柔らかさ」を取るならPP58、「育てていくフィット感」を取るならPP68。この座り心地の好みの違いは、長く付き合う上で非常に重要なポイントです。
3. インテリアの相性で選ぶ:モダンのPP58、北欧のPP68
最後の基準は、「お部屋のテイストにどう合わせたいか」です。
結論として、空間を引き締めたいならPP58、明るく開放的に見せたいならPP68が適しています。
その根拠は、素材が放つ視覚的な「重さ」の違いです。
PP58のレザー座面は、光沢と厚みがあり、空間に高級感と重厚感を与えます。特にブラックレザーなどを選んだ場合、空間全体がキリッと引き締まり、モダンなインテリアや、ウォールナット材などの濃い色のテーブルとも相性が抜群です。ホテルライクな空間を目指すならPP58が正解です。
一方、PP68のペーパーコードは、視覚的な「抜け感」があります。木材と紙という自然素材同士の組み合わせは、日本の住宅の白い壁やフローリング、観葉植物と非常に馴染みが良く、部屋を広く明るく見せる効果があります。「THE 北欧インテリア」という温かみのある空間を作りたい場合は、PP68の方が統一感を出しやすいでしょう。
まとめ
今回は、ハンス・J・ウェグナーの集大成である「PP58」と「PP68」の違いについて徹底解説しました。
最後に、選び方のポイントを改めて整理します。
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PP58(レザー座面)を選ぶべき人
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小さなお子様がいて、食べこぼしの汚れが気になる方
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モダンで高級感のあるインテリアを目指している方
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座った瞬間のクッション性や柔らかさを重視する方
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メンテナンスの手間を減らし、水拭きできる安心感が欲しい方
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PP68(ペーパーコード座面)を選ぶべき人
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「北欧家具らしさ」や自然素材の温かみを重視する方
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通気性を重視し、夏場の蒸れを避けたい方
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使い込むほどに身体に馴染む、座り心地の変化を楽しみたい方
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空間を広く見せる、軽やかなデザインが好みの方
「ラストダイニングチェア」という名の通り、どちらを選んでも、その座り心地と機能性は「人生最後の椅子」にするに相応しい完成度を誇ります。
PP58の実用性と高級感、PP68の経年変化と温かみ。
あなたの現在のライフステージや、理想とするダイニングの風景に合わせて、最高の一脚を選び抜いてください。それが、あなたにとっての「運命の椅子」となるはずです。